8月18日、わが家に加わった新しい家族、ひよこの「ねぎま」。次女とともに、毎日大切に育ててきました。
ふわふわとした黄色の産毛が、少しずつ茶色の羽根へと生え変わっていく。
成長の速さに驚かされながらも、その姿を見守るのは幸せな時間でした。
寝室にプラスチックの衣装ケースを持ち込み、そこで過ごすねぎま。
ジャンプ力がつくとケースを飛び越え、寝室を自由に駆け回るようになりました。
時折、まるで「Bボタン」を押したかのような勢いでダッシュする姿には、家族みんなが笑ってしまいました。
しかし、同時に不安も募ります。
このまま大きくなったら、どこで飼うのか。
もし雄鶏なら、毎朝「コケコッコー」と鳴くことになる。
閑静な住宅街では問題になるかもしれない。
排泄物やにおいも避けられない……。
そんな現実的な問題は、最初から分かっていたことです。けれど、何も考えずに有精卵を買って孵化させた嫁に問いかけても、だんまりでその場を去ってしまうのでした。
そして9月8日、突然嫁が告げました。
「里親が見つかった。次の土曜日に譲る。」
当然、次女は拒否しました。けれども、その声は受け入れられず…。
9月13日の朝。お風呂掃除を終えて寝室に戻ると、そこは静まり返っていました。ねぎまの姿も、飼育ケースもありません。嫁が里親へ渡しに行ってしまったのです。
ねぎまと涙ながらに別れた次女。その頬には、はっきりと涙の跡が残っていました。
あれから10日。
友人と浜大津こだわり朝市に行ったときに聞かれました。
「ねぎま、元気にしてるん?」
……いや、実は何も知らんのや。
里親が誰なのかも、どこに住んでるのかも、音信不通。謎に包まれたまま。
そこで私達は妄想力を全開にしました。
びわここだわり朝市に向かって冒険の旅に出るねぎま。
朝市で僕らと一緒に乾杯するねぎま。
友人の飼っているヒョウモントカゲモドキと真剣勝負を繰り広げ、最後は握手で「ようやったな」とお互いをねぎらうねぎま。
そんな“もしもの世界”を画像加工アプリで作り、友人と大笑いしていたちょうどその時――。
ピロン、とLINEに通知。
嫁からのメッセージには、1枚の写真が添付されていました。
そこには、里親から送られた、想像以上に元気に暮らす現実のねぎま。
「ファンタジーじゃなくて、リアルもちゃんと幸せそうやん…!」
そう思ったら、胸の中で笑いと安心がごちゃまぜになりました。
ねぎまよ、元気でな。次は夢じゃなくて、現実でまた会いたいぞ。
製造部 青山