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色々、色のお話し(第四回)印刷の順番はどう決める?

  2021年08月23日

プロセス4色印刷とは

日本の印刷業界では、写真やイラストなどの画像を印刷することを、「プロセス印刷」や、「カラー印刷」と呼んでおり、一般的には4色のインキ(墨・藍・紅・黄)を使用し、小さな網点の組み合わせで重ね刷りしています。

印刷の順番は、一般的なオフセット印刷の業界では、1色目に墨、2色目に藍、3色目に紅、4色目に黄、というのが当たり前になっています。

 

プロセスって

この、「プロセス印刷」と呼ばれる4色カラーによる印刷ですが、なぜ「プロセス」と呼ぶのでしょうか。
普通に考えれば、プロセスとは、工程、進展していく過程などと想像するのですが、、、

辞書で「Process」を調べると、以下のようなものが出てきます。

〔ある目的に向けた〕一連の行為[変化・作用・過程・作業]
〔製品の〕製造[処理]過程[プロセス]
〔時間や過程の〕進行、経過、推移
《法律》訴訟手続き
《法律》召喚状、訴状
《生物》突起
《印刷》写真製版
出典:英辞郎 on the web https://eow.alc.co.jp/search?q=process

やはり、《印刷》写真製版のことが書かれています。
もう少し調べていくと、この印刷の起源にたどり着きます。

 

プロセス印刷の起源は

現在のプロセス印刷の起源は、今から100年以上も昔の1920年(大正17年)頃、アメリカ北東部、ナイアガラ近くの印刷会社、ヒース社の印刷技師であった、Huebner(ヒューブナー)と、Bleistein(ブライシュタイン)の2人が開発した多色写真製版と印刷の技法とされています。

開発者であるヒューブナーとブライシュタインのイニシャルの頭文字をとり、「HBプロセス」と呼ばれたこの印刷技法は、当時の金額で30万円、現在の価値にするとおよそ27億円という価格でHuebner-Bleistein Patents co.(HB特許社)から、現在の凸版印刷株式会社他数社で組織されたシンジケートに技術供与されました。

HBプロセスによる印刷」が、「プロセス印刷」になったのかな、と考えると、なるほど!と納得もできますね。

 

ジャパンカラー

ではこの「プロセス印刷」は、どの様なインキを使っているのかというと、冒頭でも触れましたが、墨、藍、紅、黄(正確には透明黄)の4色を使っています。

この、4色の色相は、「ISO準拠 ジャパンカラー枚葉印刷用2011」により明確に定められており、ジャパンカラーには印刷手法に応じた様々な認証制度があります。
詳細は、一般社団法人 日本印刷産業機械工業会のHPをご覧下さい。
http://www.jpma-net.or.jp/index.html

 

プロセス4色の印刷順は

さて、前置きが長くなりましたが、この「プロセス印刷」の印刷順はどうなっているのでしょうか。

従来型の酸化重合インキを使用する、昔ながらのオフセット印刷のケースでお話しますと、前述したように、

 

1色目 2色目 3色目 4色目

で、印刷されています。

私たちインキメーカーが想定、推奨している印刷順も同様に、墨→藍→紅→黄です。

これは何故でしょうか。

一般的に、オフセット印刷の刷り順は、印刷面積が小さい方から、そして、インキが硬い順に印刷すると綺麗な印刷ができると言われています。

また、印刷作業を少しでも容易にするために、インキの濃度が高く、インキの被膜が薄い順に印刷することも重要です。

これらは、バックトラッピングと呼ばれる、後刷りインキの中に先刷りインキが混ざってしまう現象を防ぐ為で、とても重要なことです。

ISO準拠 ジャパンカラー枚葉印刷用2011によると、オフセット印刷のプロセス4色の目標濃度値は以下の通りとなっています。

墨 1.70
藍 1.55
紅 1.50~1.55
黄 1.32~1.38
※測定条件
インキ乾燥後
ステータス E(ステータス T の場合、黄 の目標濃度値は 1.03~1.05)
ブラックバッキング
絶対濃度(紙白含む)
*測定条件のステータスE、ステータスTとは、ISOのプロセス印刷用の濃度ステータス。
詳しくはX-rite PantoneのHP をご覧ください。

墨の濃度が高く、藍、紅と濃度を下げていき、黄の濃度が最もうすくなっています。

私たちは永年の経験で、プロセス4色の中で墨インキが最も消費量が少なく、黄インキの消費量が最も多い事を知っています。これは即ち、墨の印刷面積は小さく、黄の印刷面積が大きい事を意味します。

インキ会社として、これらの情報を整理すると、最も印刷面積が少ない墨インキは、薄いインキ被膜であっても明確に発色できるよう濃度を高く設定し、更にはインキを硬くする。

プロセス印刷の最後に印刷される黄は、インキ濃度を少し落とし、柔らかくすることで、バックトラッピングを防ぎ、光沢を付与します。

参考までに、昭和30年代までのオフセット印刷では、黄を1色目に印刷する時代がありました。これは、当時の黄は現在と違い、黄鉛というクロム酸鉛を主原料とした顔料を使用した、不透明黄(正確には半透明)だったため、後刷りすると不透明な黄が他の色を濁してしまうという不都合があった為です。
その後、ベンジジンイエローというジスアゾ系顔料を使用した透明性がある黄が開発され、顔料の特性を活かし、低粘度化、高光沢化などが進み、顔料自体の微細化、更なる透明化を経て現在に至ります。

 

青空を印刷するとき

では、青空や海がメイン(藍の印刷面積が最も多い)の印刷をするときは、どうでしょう。
通常は2色目となる藍と、3色目になる紅の印刷順を変え、墨、紅、藍、黄の順にした方が良いのでしょうか。

答えは簡単!
ですが、実行は大変です。

理想的な青空を印刷するのであれば、印刷順は変えた方が良く、2色目に紅、3色目に藍となります。

理想的な青空の印刷を目指すのであれば、藍と紅の胴を入れ替える事が望まれます。

印刷面積が少ない紅を先に印刷し(紅の網点を先に印刷し)、その上に藍をかぶせるイメージです。

この時に、インキの硬さ設定を変えると更に効果的で、通常使用してる紅インキよりも少し硬い紅インキを使用し、藍インキはいつもより少しだけ柔らかくすると、紅の網点はとても綺麗に印刷できます。

通常、インキメーカーは、枚葉オフセット用プロセス4色インキに、硬さを3種類程度設定しており、Sタイプ(柔らかい)、Nタイプ(標準)、Hタイプ(硬い)があり、更には硬さ調整のための補助剤として、コンパウンドやレジューサーも準備しています。これらを上手く使い分け、最適な印刷をして頂きたいと考えています(メーカーによりインキ調子や表現が異なる場合があります)

しかし、実際に印刷順を変えるのは大変です。

そう、機械の洗浄です。

インキツボ、様々なローラー、ブランケット、全てを綺麗に洗浄し、色を変えるのは想像以上に手間暇が掛かります。

いざ、印刷機を洗浄し印刷順を変えたとしても、目的の印刷が終わった後、再び機械洗浄を行い印刷順を元に戻す。この作業の労力を考えると実務は簡単ではなく、採算性や生産性を考えると現実的なのかは???ですね。

 

特色の場合は

印刷には、決まったプロセス4色だけではなく、「特色」と呼ばれる、お客様が特別に指定した色を印刷する機会が多くあります。

文字を目立たせたいときや、会社のロゴマーク等が多いのですが、ベタだったり文字だったりイラストだったり、ときには網点なんてこともあり、特色の印刷に決まったパターンはありません。

特色の色目は様々で、ほぼ墨というような濃いグレー、反対にほぼメジュームの薄いグレーもあれば、赤、青、オレンジ、緑、金銀パール等多種多様です。

ここで印刷順をどうするかは、会社の考え方、印刷物の内容、印刷オペレーターさんの考え方で様々です。

「プロセス4色+特色1色」であれば、通常は5色機で印刷、又はプロセス4色印刷後、単色機や2色機で追い刷りされると思います。

特色が複数あるときや、そもそもプロセス4色の印刷が無く、特色ばかりというとき(パッケージは割と多いと思います)は印刷の順番を考えないといけません。

印刷部分が重なり合わないときは、印刷順は気にしなくても良いと思いますが、図柄上、印刷を重ねることもあります。そういったときは先述の通り、印刷面積が少ないもの、色が濃いものから、というのが基本となります。

しかし、いつもすんなりと印刷順が決まるとは限りません。例えば墨ベタや金銀等の特殊色のときや、色付きの用紙を使用し、紙の影響を軽減するため特色の中に「白」インキを混ぜ、半透明のインキを作ることもあり、重ね刷りしてもよいものか、印刷会社を悩ませることがあります。

 

リッチブラック印刷

プロセス4色と墨ベタが混ざった印刷の場合は、印刷胴や予算の余裕があれば、墨版をプロセスベタ版分けることが理想です。分版できないときは、固い墨インキを少し柔らかくし、プロセス部分と墨ベタ部分を一緒に印刷します。後刷りとなる藍、紅、黄インキも墨インキ同様に少し柔らかくし、バックトラッピングの軽減を図ります。

さらに、墨を印刷したあとの藍、紅、黄の3色も墨ベタ部分を40~50%程度の網点で印刷すると、1色目の墨ベタの濃度を補うことができ、この手法は「リッチブラック印刷」などと呼ばれています。
*リッチブラック印刷は、裏写り、ブロッキング、見当ズレなどの原因にもなり得ますので、実際に印刷されるときはインキのセット・乾燥及び、見当調整にご注意ください。

 

金銀、白を使うときは

金銀インキ、白インキが混ざった特色インキを使用する場合は、先刷りの印刷の上に乗せて良いか、図柄によって判断することになりますが、印刷が重なる部分は先刷り部分を「白抜き」にし、細かな見当合せが必要な事が多いと思われます。この時は、インキの硬さ(タック値:インキの粘り)が高いと見当ズレの原因になりますので、可能な範囲でタックを下げると見当調整が楽になります。

 

まとめ

インキ会社目線で色々と重ね刷りに関するお話を列挙して参りました。何度も言いますが、基本的には印刷面積が小さな色から、インキはなるべく濃度を高く硬いインキで。後刷りとなる印刷面積が大きい色には、バックトラッピングを防ぐ為に柔らかいインキを使用して下さい。印刷部分が重なるとき、後刷りインキに白を入れると先刷りした色に白濁りが出ますのでご注意をお願いします。

その他、細かなことはまだありますが、ここから先は印刷のプロである印刷会社の皆さまの範疇ですので、インキ屋の私どもの出番はここまでとさせて頂きたいと思います。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

 

 

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