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「入門 インキの話 第6回」が掲載されました

  2015年10月01日
日報ビジネス株式会社発行の「季刊シール&ラベル」37号が発刊され、弊社代表によるコラム「入門 インキの話」が掲載されています。
第6話となる37号は「シール用UVインキ」と題して、硬化性と密着性、紙用とフィルム用UVインキに関する記事が掲載されています。ぜひご購読下さい。

記事のPDFはこちらSandL37
詳しくはhttps://www.nippo.co.jp/sl/をご覧ください。

久保井インキ株式会社

入門/印刷インキの話(第6回)

シール用UVインキ―

密着性と硬さは紙用とフィルム用の中間

久保井伸輔氏 + S&L編集部

印刷方式には、凸版、凹版、平版、孔版の4種類に大別される。インキはその方式によって異なるし、版の種類(活版、写真版、コロタイプ、グラビア、彫刻凹版、スクリーン、謄写版、ステンシル、水無し平版など)によっても異なる。さらに版材の違いでも異なる。「入門 インキの話」では、これまでインキには、溶剤や乾燥硬化方式による分類から水性インキや熱乾燥インキ、紫外線(UV)硬化インキなどがあることや、機能性インキ、また香りを出す特殊インキなども紹介してきた。

今回、シール印刷の中で、最も普及している凸版印刷という方式で使われているUVインキについて、その特徴的なことを学びたい。

*久保井伸輔氏(久保井インキ代表取締役社長)の発言箇所は太字に

平圧式のインキはオフ用の油性がベースに

「インキは、印刷機に合わせて作るというのが基本的な考え方。UVインキについて言えば、シール印刷業界ではロータリー印刷機の登場により、誕生したといっても過言ではない」

インキは印刷機の押圧形式(平圧、円圧、輪転)の違いや、被印刷体の形状(枚葉、巻取りなど)や、その素材(紙、プラスチック、金属、木製品、布地など)に合ったインキがある。シール印刷業界はもともと平圧式の印刷機が主流であったことからインキは油性で、しかもオフセット(平版)のインキをベースに使用していたという。

「ただ、久保井インキではオフセットのインキと多少差別化を図り、タック値(TV)を低く、ダイアメーター(DM)を小さくした、少し硬めのインキをシール用として提供してきた。比喩的に表現すれば、“水飴”のようなインキを“水羊羹”にしたというイメージのインキで、粘るようなインキでは紙が版に持っていかれる、それを防ぐために」

平圧式の印刷機は上下に版が動く。そのためインキに粘りがあると、原反(基材)が版にあおられてしまう。それを抑えるために、インキは少し硬めで、粘りの少ないものが平圧には適していた。

平圧方式に続いて登場した、「A-100」(リンテック、当時不二紙工)や「R-50」に代表される半輪転の印刷機では、平圧用のインキに比べ、多少柔らかめのインキになった。

「A-100やR-50などの半輪転は、平圧の印刷機に比べ、機構上印刷ゴーストが発生しやすく、高速回転でインキングを行っても、平圧のインキでは印刷ゴーストが起きてしまう。そのためにインキが伸びやすく広がりやすいよう柔らかめにした」

 しかし、半輪転も構造上、原反があおられるので、見当が合わないという問題は起きていた。粘りの調整という点で、半輪転用のインキもまた、インキを作る側にとって多少難しさのあるインキだったようだ。

輪転機の及と同時にシール用UVインキ開発

 1970年代初め、スイスのギャラス社が輪転機を日本市場へ本格的に進出。生産性の向上や品質の高度化を求める国内のシール印刷業者の動きもあって、当時の輸入機としては国内で最も普及した代表的な輪転機となった。

「久保井インキもギャラス用のインキとして、オフ輪用のヒートセットインキを提案し、併せて熱風乾燥装置も紹介していた。これが好評で、久保井インキがシール業界とお付き合いが始まるきっかけとなった」 

さて、シール印刷用UVインキ、その開発は輪転機が普及していく1970年代初頭とほぼ同時期だった。輪転機は高速で印刷するため、パウダーを使わないと裏移りやブロッキングを起こしてしまうという問題が発生していた。そこで、インキの硬化(乾燥)を速める対策として誕生したのがUVインキで、その発祥は紙器・板紙のパッケージ印刷からだった。

そして、UVインキには、紙用、フィルム用、その中間に位置するタイプと大きく3つに分けられるという。

UVインキはパッケージ印刷から誕生

紙用は化粧品や医薬品、お菓子などの箱など、板紙専用のインキ(UVカルトン)として開発され、国内のインキメーカー全社が製造している。

次に、フィルム(シート)用のUVインキも、化粧品のパッケージに使われているフォイル紙やフィルム・シート(クリアカートンなど)向けなどに開発された。フォイル紙やクリアカートンに紙用インキでは、箱にする際にサックマシンの工程でインキが落ちたり、値札やPOPを剥がすとインキが剥がれたりしてしまうから、だ。

「実はUVインキは、密着性と硬化性という観点から3つに分類できる。密着性を付与するメカニズムというのは硬化性と大きく関係している。UVインキは紫外線で硬化する際に体積収縮を起こす。一般的に体積収縮を起こしやすいUVインキは架橋密度が高いので、インキ被膜は強靭で硬化速度(乾燥)も速い。しかし密着性は弱いのが紙用のUVインキの特徴。一方のフィルム用は、密着性は強いが、硬化速度が遅く被膜も弱い。その中間に位置するのが、その両方のバランスを適度に備えた特徴を持つインキがあり、このタイプが一般にシール印刷用の基材であるミラーコート(キャストコート)やユポ、ネーマー等に使われている」

 シール印刷のフィルム系基材としては、合成紙(ユポ)、白PET、透明PET、ネーマ(蒸着)などがあり、いずれもより密着性を高めるために表面処理(コロナ処理)される。

 密着性の弱いパッケージへの印刷の場合、輸送中や店頭での陳列の際にこすれて傷がつくことがある。その予防のためにシリコンニスでコーティングをしたり、シールラベルはラミネートする場合がある。

 インキの色の成分、CMYK(藍・紅・黄・墨)によって硬化速度は違うのかという疑問も湧く。

「墨はUV光が届きにくいということで、硬化は遅い。他にも金インキ、銀インキも硬化速度は遅い。しかし、UVインキの硬化の問題は大半は、『インキの話 第2回』でも説明したが、〈インキの盛りすぎ〉、〈印圧の掛けすぎ〉〈補助剤の入れすぎ〉の『3すぎ』であることをあらためて強調しておきたい。

次回は、シール・ラベル用UVインキとパッケージ用UVインキについて学ぶことする。

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