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「入門 インキの話 第4回」が掲載されました

  2015年03月30日
日報ビジネス株式会社発行の「季刊シール&ラベル」35号が発刊され、弊社代表によるコラム「入門 インキの話」が掲載されています。
第4話となる35号は「シール・ラベルのフレキソ」と題して、フレキソインキのあれこれ、シール・ラベル印刷業界のフレキソを語るうえで外す事のできない偉大なる先人の話になっております。ぜひご購読下さい。

記事のPDFはこちらSandL35
詳しくはhttps://www.nippo.co.jp/sl/をご覧ください。

 
久保井インキ株式会社

入門/印刷インキの話(第4回)

シール・ラベルのフレキソ――
そこにはパイオニアと普及の立役者が
最大の利点は厚くインキが盛れること

久保井伸輔氏 + S&L編集部

シール・ラベルの印刷において、欧米ではフレキソ印刷が主流だ。特に、米国では1980年に大気汚染防止法が施行されたことにともない、フレキソ印刷は環境にやさしい印刷方式として急速に普及していったといわれている。しかし、日本においては凸版印刷方式が今なお主流であるが、それでもここ最近は、UVタイプのフレキソ印刷機を導入するケースも増えつつある。そこで、今回のテーマはUVフレキソインキに焦点を当ててみることにする。

*久保井伸輔氏(久保井インキ代表取締役社長)の発言箇所は太字に。

フレキソ含む樹脂凸版インキシェアは6%弱

フレキソ印刷は欧米で普及している。特に1980年に大気汚染防止法が施行されて以降、急速にフレキソ印刷が普及した米国では、すでに包装印刷市場全体の約8割をフレキソ印刷が占めるといわれている。欧州も2005年時点ではオフセットがトップで、次いでフレキソだったものが、2007年にはフレキソ印刷が包装印刷市場でトップになったという。

一方の日本はどうだろうか。日本印刷インキ工業連合会による2013年の統計によれば、国内の印刷インキの出荷量は約42.5万t。このうちグラビアインキが約15.9万t、続いて平版(オフセット)インキが13.5万t 。この2種類のインキだけで全体のおよそ7割を占める。これに対してフレキソインキを含む樹脂凸版インキが約2.4万tで、全体の6%にも満たないというのが現実である。

シール業界のフレキソパイオニアはタカラ

ところで、日本ではフレキソ印刷といえば、主に段ボールや紙袋の印刷とイメージが強い。それはフレキソ印刷の9割以上を占めているからだといえる。
また、以前から”水性インキ”が使われているというが、実際には有機溶剤を含んでいるもので、今日の水性フレキソインキとは異なるものだった。

 「フレキソで、シール・ラベルのフレキソ印刷のパイオニアは、日本ではやはりタカラ(社長・津田邦夫氏)の創業者と先代の社長であるのは間違いないと思う」

 今から48年前の1967年に、タカラの津田社長の伯父にあたる創業者(故・津田毅一氏)と、父である先代社長(故・津田政亮氏)が、米国で開催された展示会(Pack Expo)で導入したフレキソ機(ソーン社製)が、日本国内のシール・ラベル印刷業界における第1号機というわけだ。

この頃の同社のフレキソ印刷に対する取り組みや苦労について、本誌のインタビュー(2014年秋季号)で、津田社長は次のように語っていた。「製版する技術が当時の日本にはなく、ゴム版を自分で作るという作業をしなければならず、試行錯誤が続いた。(実際の商業ベースに乗ったのは)製版技術を習得するため、73年に先代社長が単独で渡米し、そこで主に製版技術を学ぶため研修を受けた。この研修後に2号機となるフレキソも導入し、(中略)食品などでは店頭に並べてもばらつきがないということで評価された」という。

UVフレキソ普及の立役者はリンテック

しかし、高精細な写真印刷となると、当時のタカラでは水性インキではなかなかうまく再現することは難しかったようだ。「(1980年代後半に)写真印刷を目的に導入したフレキソ印刷機だが、(中略)水性インキは乾きが良いので、それが実は印刷汚れの原因になって、版の上に乾いたインキが付着して、それが版の汚れとなり、印刷物にも影響を与えてしまう」(津田社長)というトラブルが続いたようだ。

「当社にも油性と水性の兼用のフレキソ印刷機を導入した印刷会社から使いにくいので、UV仕様に改造して欲しいとの要望があり、UV照射装置を持って据え付けに行ったのが、1990年代。この時期は、欧米のUV仕様機が相次いで発表された時期で、その代理店としてリンテックがUV仕様のマーカンディを扱うようになった。当然、UVインキが必要になるということで、UVフレキソ印刷機のプロジェクトを立ち上げたリンテックの本社や埼玉の伊奈に、何度も足を運んだことを記憶している。その意味でUV仕様のフレキソ機を国内のシール・ラベル印刷会社に普及させた立役者は、間違いなくリンテックだろうと思う」

その当時、国内のUVフレキソインキメーカーは、T&K TOKAと久保井インキの2社だけ。評価もUVを照射しないかぎりは硬化しないので、版が汚れるという問題は起きないし、取り扱いやすいと評価はあった。

「しかし、国内のUVフレキソインキは欧米のものと比べると、それほど評価できるものではなかったので、当社はUVフレキソインキの国内製造を一旦は中止。ただ印刷機械そのものは普及しているので、欧州のアグゾノーベル社からUVフレキソインキを輸入して対応することになった」

 2000年以降になると、UVフレキソ印刷は確実に普及していく中で、国内のインキの材料や品質も格段に良くなり、T&K TOKAのほか大手の東洋インキ、ザ・インクテック(現DIC)なども参入し、久保井インキも国内でのUVフレキソインキの生産に再度踏み切ることに。

フレキソ普及に“オーケストラ”との提唱者

 本誌の推計ではあるが、主にシール・ラベル印刷向けのナローWEBタイプのUVフレキソ機は、日本国内でおよそ70~80台であろうと見ている。

「2000年以降のフレキソ印刷の普及には、1990年代後半から2000年代初めに“フレキソはオーケストラだ”と提唱されたコーパック(倒産)の社長であった小林淳一氏や、コムテックス会長の渡邉孝男氏(故人)らの貢献もかなり大きいと思う。フレキソ印刷はフレキソ印刷機だけではだめ。インキと版とアニロックスとスリーブと両面テープ等々がしっかりとベストマッチしなければならない。まさにオーケストラであり、オーケストラは一人の演奏者だけでは成り立たない、ハーモニーが大切だという考えは間違ってはいない」

UVは水性や油性より扱いやすい

最近では凸版印刷(レタープレス)のCTPの普及で、シール・ラベルの印刷現場では、フレキソ印刷の優位性、あるいはその差が縮まったというような評価もある。

しかし、レタープレスに比べ高速で印刷ができること、印刷の安定性が保てること、またインキの坪を調整することも不要で、アニロックスの選定だけで、理論上は朝から晩まで同じものが刷れるというのがフレキソ印刷の利点ではあるが、UVの優位性ではない。

「水性フレキソインキはインキ乾燥後の被膜はほぼ無臭ではあるが、乾燥させるためにより多くのエネルギーを必要とするのに加え、版上での乾燥が速いので、そのためのコントロールが難しい。油性(溶剤)のフレキソインキは比較的コントロールはしやすいが、臭気が強く、防爆対策も必要になるし、室内の排気対策も必要になる。また、水性も、油性もインキが蒸発していくので、原液やリフレッシャーを入れるなどの濃度調整が必要になる。その点、UVは照射しなければ硬化しないので、扱いやすいインキだ」

UVフレキソの優位性とは?

 では、UVフレキソの優位性とは、いったい何か?

「まずUVフレキソが利点であるというシール・ラベル印刷は、日本ではまだまだ少ない。量という点で言えば、レタープレスの輪転機で十分に対応できているところが多い。では高品質のシール・ラベルということになればオフセット(平版)の印刷でとなる。また樹脂凸版用のCTPも普及し、かなりオフセットの品質に近い高解像度の印刷が可能になってきている」

実は、日本のシール・ラベルの印刷は墨だけや紅と特色の2色などが多く、フルカラーのシール・ラベル印刷というのは意外に少ない。

「そこで個人的な結論ではあるが、UVフレキソの最大の利点は、版やインキが柔らかいのでインキを厚く盛れるということ。例えば、透明フィルムに白インキで隠蔽性を付与することができるということだろうか」

次回は、機能性(特殊)インキの種類を学ぶことする。

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