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「入門 インキの話 第三回」が掲載されました

  2015年01月06日
日報ビジネス株式会社発行の「季刊シール&ラベル」34号が発刊され、弊社代表によるコラム「入門 インキの話」が掲載されています。
第3話となる34号は「3つの補助剤」と題して、コンパウンド、レジューサー、ドライヤー等のインキ用添加剤に関する話になっております。ぜひご購読下さい。

入門/印刷インキの話(第3回)

3つの補助剤コンパウンド、レジューサー、ドライヤー)

インキの柔らかさや、硬さはオペレーターの好みで決まる

久保井伸輔氏 + S&L編集部

「入門/印刷インキ」の今回のテーマは、補助剤。この補助剤の上手な使い方、また使う上での注意点について学んでいきたい。なお、久保井伸輔氏(久保井インキ代表取締役社長)の発言箇所は太字にしている。

温度で変わるインキの粘度

通常の印刷においては、従来からの取引先である国内のインキメーカーから購入したインキであれば、そのまま使用しても良好な印刷ができるはずである。ただ、同じインキでも、真冬の北海道・旭川市内にある印刷現場のインキの状態と、真夏の埼玉・熊谷市内にある印刷現場のインキの状態は、硬さがかなり違う。また同じ現場でも、稼動する前の朝の印刷機のインキつぼ内の温度は低く、稼動を続けた午後のインキつぼ内の温度は高くなり、インキの粘度も変わる。しかし、こうした点も考慮して、国内のインキメーカーは、同じ銘柄であっても色々な粘度のインキを品揃えしているので、まずはインキメーカーに相談しながら、それぞれの季節、環境に適したインキを選択することが望ましい。

「われわれはインキのプロであり、しっかりとスペックを決め、再三にわたり試験を繰り返し、改良を続けてきたインキをマーケットに出してきている。しかし、それでも全てのお客さまを包含することはできない。そこで、補助剤というものによって、インキの適性を変えていただいている」

管理指標はタックバリューとダイアメーター

インキの物性(硬さや粘度など)を示す指標にタックバリュー(=TV、タック値)と、ダイアメーター(=DM、フロー値)がある。TVは粘りつきの強さを表し、DMはインキの広がりやすさを示す指標だ。

まずTVはインコメーターで測定する。インキを引きちぎろうとする時、インキ内部に引きちぎれまいと抵抗する力がはたらく。この力をタックといい、インキが基材などに被着する力と、インキ同士が引き合う凝集力などが関係する。TVはまた温度に影響を受ける。温度が低いときはインキが硬いので、高い値を示す。逆に温度が高くなるとインキは柔らかくなり低い値になる。このため、冬や寒冷地ではTVの低いインキを使用し、夏場などはあらかじめインキのTVが高いインキを選択することが一般的だ。

「ただ、シール業界ではあまりTVという概念を意識している方々はほとんどいないと思う」

次に、インキの流れて拡がり度合いを示す指標にDMというものがある。スブレッドメーターを使用して、一定の時間内に拡がった直径を示されるというのがDM。

「インキの物理的性質をみる指標として、基本的にはTVとDMの2つをインキの管理指標としている。この2つの管理指標についてはJISでも規格化(JIS5701)されている。このTVとDMの値を調整する目的として、今回のテーマであるコンパウンドなどの補助剤を使うことになる」

 “腰切り剤”といもいわれる補助剤には、大きく2つある。コンパウンドとレジューサーだ。

コンパウンド

まずコンパウンドだが、日本印刷産業連合会編集の「現場で役立つ印刷用語集」によると次のように解説している。

〔コンパウンド compound インキに添加して印刷適性や仕上がり効果を改善するための補助剤の総称。摩擦性向上、裏移り防止などに役立つものであり、インキによっていろいろなコンパウンドがつくられている。ただし、コンパウンドは加えすぎると印刷適性や仕上がり効果をこわしてしまうことが多い〕

「コンパウンドの外見は、羊羹とかフルーツゼリーのようなもので、これをインキに入れることによって粘りを下げる。いわゆる腰を切るということ。このTVの値を下げることによって版離れ、紙離れが良くなる。シール業界で使われている印刷機として半輪転があるが、紙の流れ方向に対して、垂直方向(紙幅)に版が転がる。この時に版離れ、紙離れが悪いと、紙が版にあおられてしまうために、印刷見当が合わないという現象が起きてしまう。平圧機も同様で紙が上下に揺れるので、そうした現象がしばしば起きる。そのためコンパウンドを入れる頻度が半輪転や平圧機は多い」

レジューサ

 次にレジューサーだが、「現場で役立つ印刷用語集」では、以下のように解説。

 〔レジューサー reducer 印刷インキの硬さや粘着性を低減させるためのインキ助剤。インキ用の溶剤がレジューサとしてもちいられる。〕

「レジューサーもコンパウンドと同様の使い方ができるが、腰をあまり下げたくない、インキの流れを良くしたいというときに使う。レジューサーを使うことで、DMの値が大きくなる。すなわちインキが柔らかくなるということだ。DMは大きくなればなるほど柔らかくなる。一方、TVは値が大きいと硬く、小さいと柔らかさを示す。実は、シール業界で使いやすいインキというのは、“ロータック”で、“ビッグダイア(もしくはロングフロー)”というように一般的には言われている」

インキのTVの値は、温度によって変化する。インキの使用条件として望ましいのが、工場内の室温が25℃であること。オペレーターにとっても25℃の環境が好ましい。

ところが冬場、外気温が5℃であれば、工場内の温度も10℃を切る環境になり、インキも硬くなる。理想的な環境としては、冬場でも空調管理をして、室内温度を25℃に設定できれば問題はない。特に、早朝は工場内も機械温度も低い状態の中で、硬くなったインキを柔らかくする方法として、補助剤を使うということになる。

「一般的にインキは25℃の温度で印刷することを想定して製造しているので、例えば15℃ではインキのTVの値は相当大きくなり、DMの値は小さくなる。そのためインキの硬さ、柔らかさを調節するためには、冬場はコンパウンドやレジューサを入れざるをえない。インキメーカーとしても、冬場や夏場を想定して柔らかめのインキ、硬めのインキそれぞれを製造している。しかし、それでも冬場の厳しい北海道では補助剤は必要になる」

ドライヤ

実はコンパウンドやレジューサーのほかに、インキの乾燥不良(実際にはUVインキなので硬化不良が正しい)を補う補助剤としてドライヤーがある。「現場で役立つ印刷用語集」では次のように説明している。

〔ドライヤー drier;drying agent 酸化重合型インキの乾燥促進剤。マンガン・コバルトの志望塩酸(金属セッケン)を有機溶剤に溶解したものが一般的に使用される。ドライヤーは金属成分の種類によって乾燥形態が違ってくる。コバルトは乾燥速度が速く、とくに表面から乾燥する。マンガンは全体乾燥に効果があり、生成皮膜は硬い。添加量が多いほど効果はあるが一般には添加量は1~3%の範囲である〕

前回も指摘したが、UVインキの硬化不良を起こす原因は3つ。

まず第1が、『インキを盛りすぎる』ということ。第2が『印圧が強すぎる』こと。そして第3に『補助剤(レジューサー、コンパウンド)の入れすぎ』であるとこと。

UVインキにはもともと光重合開始剤が入っているが、補助剤の多くは光重合開始剤が入ってないので、入れすぎると硬化性がマイナスに作用し硬化不良を起こす。

「コンパウンドやレジューサーを入れてインキが薄まると、インキが本来持っている乾燥(硬化)性能が落ち、硬化不良を起こす。そこで使われるのがドライヤー。このコンパウンド、レジューサー、ドライヤーの3点の組合せ、割合が重要だ。例えば、インキが100であれば、コンパウンドとレジューサーはそれぞれ5まで。その割合でドライヤーは1が基本になる」

パッケージ関係で使われる補助剤

そのほかの補助剤として、パッケージ関連で多く使われる補助剤がある。耐磨性の添加剤だ。

「表面皮膜を保護する目的で使われる補助剤がある。ラベルはパッケージの外側に貼られることが多い。そのため流通過程で擦れて色落ちすることがある。代表的な補助剤としてワックスやシリコンなど、耐磨性を付与するというものだ。特に栄養ドリンクや酒類関係のビンに貼られるグルーラベルで使われている。こうした補助剤は充填ラインのブロッキングを防止としての用途でも使われている」

インキは生き物?

補助剤の使用頻度は、季節によって変わるが、地域性によっても変わる。また、個体差によっても違うという。

「インキは生きものだという人がいるが、そうではない。インキを使う人間が生きものだということ。オペレーターの好みで、補助剤の量が変わる。コーヒーと同じ。ブラックが好きな人、砂糖を入れる人、ミルクを入れる人、砂糖もミルクも入れる人。柔らかいインキで印刷機を操作する技術を習得した人、硬いインキで機械操作の手順を習得した人、それぞれインキの好みが違う。オペレーターや職人の気質によっても、インキの好みが変わるというのが実際だ。つまりインキの好みに違いはあっても、結果として、きれいな印刷ができれば問題ではないといえる」

記事のPDFはこちら SandL34
詳しくはhttps://www.nippo.co.jp/sl/をご覧ください。

久保井インキ株式会社

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